むし歯について
概説
今からおよそ4,000年も前に、むし歯は歯が口の中にいる虫に食べられて穴があいたとする学説が唱えられ、以後ずっと信じられてきました。
しかし、18世紀にそのような考え方は否定され、1890年になってやっと細菌が口の中で食べかすから酸をつくりだし、その酸で歯が溶けたとする考え方が出てきました。
この考え方が基礎となって、今では次のような4つの条件がそろった場合にむし歯になると考えられています。
- むし歯になりやすい歯の質、歯並び、噛み合わせになっている。
- むし歯菌が旺盛な活動をしている。
- 歯につきやすい甘いもの(糖質)を多く摂取する食習慣がある。
- プラーク(歯垢〈しこう〉、歯くそ)が歯に付着したままになっている時間が長い。
逆のいい方をすると、これらの条件のどれか1つでも欠けると、むし歯はできないといえます。
症状
口の中には、常在菌が少ない人でも120種、多い人では350種以上も存在しています。
その中のミュータンスなど数種類のむし歯菌が歯の表面に付着しているところに、砂糖などの糖質がつくと、菌体内多糖という糊(のり)のようにべたつくものをつくりだして歯に強力に付着して、繁殖を始めます。
この状態をプラークといい、歯磨きをしていない状態の歯の表面を爪や楊枝で掻き落とすとチーズのような粘着物として目で容易に見ることができます。
このプラークの中で砂糖や炭水化物が発酵し、酸が産生され、蓄えられます。
そして、この酸によって硬く石灰化していた歯質が脱灰(だっかい)されてしまいます。
初期の脱灰は、歯の最表層よりも、内層に数十ミクロン入ったところのほうが強く起こり、歯の内部に浸透した光が複雑に屈折反射するために白濁(はくだく)した様相(白斑〈はくはん〉)を呈しています。
この白斑のレベルであれば、ていねいな歯磨きを続けることで唾液の生理的作用によって再石灰化が期待できます。
このように脱灰と再石灰化が繰り返しつつ起こりながら、再石灰化よりも脱灰が多く起これば、その結果としてむし歯が発生することになります。
脱灰と再石灰化。この二つの言葉を覚えておいて下さい!
▲脱灰(だっかい)とは歯が溶けようとする状態、すなわち、ほうっておくと虫歯になります。
●再石灰化(さいせっかいか)とは、溶けかかっている歯がもとに戻ろうとしている状態です。
脱灰と再石灰化は常にお口の中で起こっています。
虫歯の原因は、お口の中の細菌です。歯の表面は唾液の成分によって保護されていますが、細菌が砂糖などの糖を食べ、酸をつくることによって、少しずつ脱灰が進んでいきます。
しかし、唾液の働きなどにより再び環境が改善されると、歯の再石灰化が促進されます。
こうして口の中では常に脱灰と再石灰化を繰り返しているのです。
むし歯の治療について
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