矯正歯科について
ワイヤーなどによる矯正力により歯を正常な位置に移動させ、あるいは上顎骨、下顎骨の形態変化を起こすことで、審美性や顎口腔機能の回復やその予防を目的とします。不正咬合は多くの疾患や機能障害の原因となり、これを取り除く矯正歯科の役割は大きいと言えます。
日本では、審美目的の矯正などでは保険が適用されないため、大体60万から120万円の費用が必要となります。アメリカ合衆国、ニュージーランド、イギリスなどでは保険が適用されるようです。アメリカでは幼少期の間に矯正治療を行うのが普通です。当院では矯正するしないに関わらず矯正相談(3,000円/税抜き)で治療の概要、費用、期間等をご説明いたします。
概説
歯並びが悪いためにうまく噛めない、発音がきれいでない、容貌が損なわれるなど本人にとって放置できないことが多いにもかかわらず、わが国においてはそれが社会的にマイナスになることはあまりありませんでした。しかし、国際的には大きなハンディキャップになり、日本では八重歯が可愛いなどと評判だった女性歌手が、アメリカでは口もとが気持ち悪いと舞台から降ろされたこともあります。
歯並びが整っているかどうかの判断基準は、前歯では上下の前歯のかぶさりぐあいと、正中が顔の真ん中に一致しているかどうかです。これは注意深く観察すれば誰にでもわかると思います。奥歯の場合は、第1大臼歯(だいきゅうし)の噛み合わせをみるのですが、これは素人には難しいでしょう。
乳歯でも永久歯でも生えそろうまでは、一時的に不ぞろいな歯並びになるもので、乳歯の受け口などは放っておいても、永久歯に生え替わると自然に治る場合もあります。不ぞろいの程度が異常なほどなのかどうかの判断や、放っておいてもよいケースなのかの診断は、小児歯科医や矯正歯科医の専門的な診断が必要です。
症状/診断
1)叢生(そうせい)
雑然とした歯並びで、乱杭(らんぐい)歯のことです。八重歯もこの1種です。歯の大きさに対して顎の骨が小さすぎる時や乳歯の奥歯が早く脱落して永久歯が前に寄って生えた時に起こります。
2)上顎前突(じょうがくぜんとつ)、上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)
これらはいわゆる出っ歯ですが、内容に違いがあり、日本人には上下顎前突が多いようです。上顎前突は、上顎の歯だけが前に出ている状態で、下顎の歯はよい位置にあるものと、上顎の歯はよい位置にありながら、下顎の歯が奥に引っ込んでいるために見かけ上出っ歯に見えるものの2種類があります。上下顎前突は、上顎も下顎も両方とも前方に突出しているものです。ここでいう前に出ているという基準は、頭蓋骨に対してですから、頭の骨と歯を同時にレントゲン写真にとって、計測して診断します。
3)反対咬合(はんたいこうごう)、下顎前突(かがくぜんとつ)
上下の前歯のかぶさりが逆になっていて、下顎のほうが前に出ている噛み合わせです。前歯全部についてこのようになると、受け口といいます。下顎前突は、骨格的に下顎の骨自体が大きくなった場合をいいます。下顎の異常な発育は、中学生頃から目立つようになり、男性では19歳、女性では17歳頃の身長の伸びが停止する頃に一致して顎の発育も止まります。
4)その他の異常
開咬(かいこう)は奥歯の1~2本だけが噛み合い、前のほうの歯は噛み合わさらない状態です。
指しゃぶりや挿舌癖(そうぜつへき:舌を歯の間にさしこむ癖)が原因の1つと考えられますが、詳しいことはよくわかっていません。過蓋(かがい)咬合は開咬とは反対に、前歯の被さりが深すぎて、下の前歯が上顎の前歯の後ろの歯肉を噛んでしまうものです。長年のうちには上の前歯が徐々に出っ歯になっていきます。
顎変形症(がくへんけいしょう)は顎の骨自体の変形で、下顎に多くみられます。変形下顎のために歯の噛み合わせも異
空隙歯列(くうげきしれつ)は、歯と歯の間がぴったりつかずに隙間が残っているところがたくさんあるもので、すき歯ともいいます。顎の大きさに対して歯が小さすぎる場合、舌が強く前歯を押す習慣があるとなります。中年以降では、歯周病が進み、歯を支える顎の骨が吸収して歯をしっかり支えなくなるとみられます。